メンタルヘルス不調で欠勤が続く労働者の労務管理は、トラブル防止の観点からも慎重に行う必要があります。
■労働者からの不調の申し出
労働者が、長時間残業や配置転換、パワハラ、セクハラ等の理由によるメンタルヘルス不調を訴え、業務上災害として労災保険からの治療費や休業補償の申請協力を求めてきた場合、業務上について疑いのないケースであれば事業主としてはその証明に速やかに対応しなければなりません。しかし、はっきりと業務上であることがわからない場合には安易に応ずることなく、事業主と労働者の異なる言い分について専門家等を交えて対応を検討する必要があります。
■労働者からの不調の申し出
メンタルヘルス不調が業務上災害としての認定されるのは、厚生労働省が発表している指針「心理的負荷による精神障害の認定基準」によります。労働基準監督署が必要な調査を実施して認定を行いますが認定されるまでは数ヶ月かかる場合も少なくありません。業務上か否か不明であっても欠勤が続く場合、労働者が一番苦慮するのは欠勤で収入が途絶えること、解雇を申し渡されるかも知れないという不安です。そのため退職理由を巡ってのトラブルに発展しかねないリスクがあります。メンタル不調が障害という位置づけに異論もあるでしょうが、最近は厚労省もホームページや新聞等で広報を行っているとおり、労災保険の他に、国民年金や厚生年金制度には障害年金があることはまだ多くの方が理解していません。
■障害年金の利用
多くの企業では 「障害年金請求は個人対応のものであり、労災と違って事業主が証明する項目はないし、障害年金については教える義務もない」と思っているかも知れません。メンタル不調により労務に就くことができない場合、多くはまず健康保険からの傷病手当金を受けます。その後に続く制度として、年金制度があります。普段から障害年金の所得補償の可能性を助言しておくことでトラブルを回避することができるかもしれません。