かねてから企業の不祥事の発覚は、内部からの通報や告発によって明らかになることが多く、情報ツールの発達や社会の法令遵守の強まりから、内部告発・内部通報が増えているように思われます。一般的に“内部告発”は、「内部者による外部への告発」といわれ、この外部とは、監督機関、報道機関がそれにあたります。また、“内部通報”は「内部者が組織内部に通報するもの」で総務部や監査部門などが対象部門になるでしょう。
■内部告発・通報の要因■
組織内の事業活動は、通常は外部からは不透明であり、そこで悪事が行われていてもそれを外部の人が認識することは困難でしょう。しかし、そのような組織の中にあってそれらの行為に否応なしに加担している
(させられている)社員が、関係機関等を利用して改善しようとするのが内部告発・通報という行動となります。このように内部告発・通報が起こる理由としては、「消費者を欺く行為」「社会に公表すべき事案の隠蔽」など本来公にすべきことを隠していることや、「上司や組織への不満」など、自分が置かれている立場の改善が目的の場合など様々です。
■現状の課題■
平成18年4月1日より「公益通報者保護法」が施行されました。この法律では、内部告発も内部通報を行った人は、一定の要件のもとで保護されます。この「保護」には、「公益通報を理由とした解雇は無効」「公益通報を理由とした降格、減給などの不利益の禁止」が定められています。しかし、法律で保護されているとはいえ、次のような問題を抱えています。
・告発・通報する側の氏名等が関係機関等から企業側に漏れてしまう
・関係機関等が、内部告発を放置してしまい、後にマスコミなどによってその事実が発覚する
・通報者は法で保護されているにもかかわらず、告発者に対する報復・制裁が行われてしまう
企業側としては、 内部告発の前に内部通報を行ってほしいところですが、 これには労使双方が信頼できる制度の構築が必要でしょう。