従業員は、会社が雇用している(会社に雇用されている)とはいえ、家族の状況や自分の健康状態など、会社に知らせていない情報が多くあります。一方で、会社側としては「転勤させたいが家族に要介護者はいないだろうか」とか「顔色がすぐれないが心配事があるのではないか」と従業員の個別の事情は企業活動に少なからず影響がありますので、ある程度は知っている必要もあるでしょう。
■採用時において■
会社は“採用の自由”を有していますが、面接の際に「聞いてはいけない項目」として厚労省から指針が出されており、その中に「家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)」があります。しかし、会社としては採用後に問題が発覚することがないように「家族関係や精神状態を知っておきたい」と思うのは当然のことです。そこで必要な情報の入手については、その「目的」を説明した上で「同意」を求めることが望ましいでしょう。具体的には「当社は転勤があるが、家族のことで転勤に支障があると困るので、家族の状況を聞いてもよいですか」と尋ねることで、“プライバシーの侵害”もなくなります。
■健康診断結果の通知■
健康診断は、労働安全衛生法で実施が義務づけられており「事業者は、健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない」と規定しています。つまり、法律上は「会社が労働者の健康診断結果を知る」ことが前提となっていますが、健診機関によっては健康診断の結果を事業者に知らせないばかりか、労働者本人の自宅に郵送するケースも見られます。これは健診機関が健診結果を会社側に提供したことによる苦情への対応や訴訟になることへの過剰対応と考えられますが、これでは会社側の労務管理上支障があります。この対応としては「法律の主旨」と「労務管理上の重要性」を説明して従業員に納得してもらう必要があるでしょう。それでも健診結果の提出を拒む従業員には、懲戒処分などの態度で臨まなければならないかもしれません。