役職への登用や職位の上がることを昇進といいますが、これは極力慎重に特に組織としての必要性と本人の適性を吟味した上で実施しなければなりません。
古参の社員に対して、その長年の貢献に報いるために「部長」の職を与えたり、中堅社員に「そろそろいい年齢だから」という理由で「課長」に就けたりという例を見ることがあります。
■避けるべき昇進の理由■
1.本人の名誉のため
2.賃金を上げるため
3.組織の体裁のため
いわゆる「名刺に肩書きのつく」身分になると、周囲は「一般社員と違って、職位に応じたことができて当然」という目でその人を見ることになります。不相応な肩書きであると判断すれば、その人を蔑視することにもつながっていきます。また、本人にとっても自分の職位と実力や適性とのギャップを見つめるのは辛いことです。名誉のためならば、たとえば「○○スペシャリスト」という称号(職位とは関係なく)を作ったり、表彰をしたりということで代替可能です。職位を上げなければ賃金も上がらないのならば、そしてそのことに不都合があるのならば、賃金体系を見直すことが本筋です。体裁のためだけに役職者を作ることは誰の利益にもなりません。
■職位の引き下げには理由が必要■
現在の職位にふさわしくないのならば、下げればよいのですが、これも容易なことではありません。当事者の感情が害されることにより、職場のムードが悪くなります。職位引き下げを巡って裁判になり「就業規則による根拠と相当の理由が必要」とされた例もあります。何よりも「簡単に役職を剥奪するぐらいならば、最初から昇進させなければ良いのだ」と当人も周囲も考えます。人事は経営者の専権事項ではありますが、無制限と考えず役職の「重み」を関連者が認識できるような運用が求められます。