会社が企業秩序や職場規律を維持するために、業務上で非行行為を犯した労働者に対して懲戒処分を行うことは、法令等に反しない限り認められています。しかし、業務と関係のない場で行われた非行行為を理由として懲戒処分を行うことができるのかについては難しい問題があります。
■終業後のトラブル ■
たとえば従業員が終業時間後に職場外で飲食中に酔ってけんかをして、警察沙汰になったとします。会社の就業規則に懲戒処分として「会社の体面を汚す行為があったとき」との記載がある場合、この非行行為をどのように扱えばよいのでしょうか。一般的にはその非行行為が企業秩序を侵害する限り、あるいは企業の対外的評判、体面等を著しく侵害する限り会社は懲戒処分を科すことができると考えられます。ただ「懲戒解雇」を行おうとすると、従業員にとって不利益な処分になる場合がありますので慎重に検討する必要があります。
■判例では ■
最高裁の懲戒解雇事由に該当するかという判断基準は「従業員の行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的に業務阻害があったことや取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質・情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位・経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断してその行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」としています。
■対策は ■
実際、こういった非行行為により新聞等の報道がなされなくても、取引先の信用や職場内の環境に変化があることがあります。会社が従業員の私生活にまで口を出すことには問題がないわけではありませんが、従業員の非行行為が会社にとってリスクになる可能性があります。非行行為を行った従業員を懲戒することよりも従業員の倫理観について教育することが重要といえるでしょう。