従業員が金融業者などから借りたお金の返済が滞り、その業者から会社に対して支払催促があったり、裁判所から「給与の差押」通知が届くことがあります。このようなとき会社はどのように対応したらよいのでしょうか。
■取り立てのケース■
金融業者から会社に直接連絡があり、その従業員の給与から借入金の一部(又は全部)の返済を求められたときは、労働基準法第24条の「賃金は、その全額を支払わなければならない」(賃金の全額払いの原則)により、その業者に対して給与から返済額を控除して支払うことはできません。
■裁判所からの給与差押命令■
金融業者が債権者となり、債権を回収するために裁判所に申し立て、裁判所がこれを認めると、裁判所から会社に対して「差押命令」が送達されます。差し押さえられる金額は、民事施行法第 152 条によって、「給与支給額から、法定控除額を差し引いた残額が、44万円以下の時は、4分の1、44 万円を超える場合は、33
万円を超えた額」です(給与のすべてが差し押さえられるわけではありません)。法定控除額には、所得税や社会保険料のことで、給与から天引きされている住宅ローン、組合費、共済費等は含まれません。
■賞与や退職金からの控除■
賞与からの差し押さえについては、給与からの差し押さえと同じルールが適用され、退職金からの差し押さえについては、金額に関係なく4分1が差し押さえの対象となります。
■会社側は第三債務者■
裁判所からの差押命令が送達されると、会社側は「第三債務者」となり、債権者から取り立てられる立場になります。第三債権者は、債権者の取り立てに応じて支払うか、供託所への供託のいずれかを選択します。2つ以上の差押命令があった場合は、一方の債権者に弁済し、他方の債権者に供託することはできず、両方の債権者分を供託することになります。