景気の後退、非正規労働者の増加などにより、複数の会社をかけもちで働く人がいます。現在の労働関係法令は、このような働き方には対応できていませんが、 その中でも平成18年に労災保険法の一部が改正され、少しずつですが、複数の事業所で働く人のための制度が整いつつあります。
■事業所間の移動に対する通勤災害適用■
従来通勤災害は、「住居と就業の場所との往復」時に起きた災害に対して給付を行っていましたが、 平成18年の法改正により、「就業の場所から他の就業の場所への移動」が追加されました。これにより、第一事業所から第二事業所への移動の際に災害に遭った場合は、 通勤災害として取り扱われ、その申請は“第二事業所”側で行うことになります。
その時の休業補償給付などの保険給付は、 “第二事業所”で支払われた賃金をもとに計算します。 現在のところ第二事業所の賃金が第一事業所の賃金を合算する仕組みはありません。
■時間外労働時間■
労働基準法第 38 条第1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、 労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定しています。これは、同じ使用者に雇用されている場合はもちろんのこと、 通達により、
“異なる使用者に雇用される場合も適用される”となっています。ここで、問題になるのが、1日8時間を超えたときの割増賃金の支払いです。 第一事業所で6時間、第二事業所で4時間勤務した場合は、その合計労働時間が8時間を超えたところから割増賃金の対象となるので、 第二事業所が割増賃金を負担することになります。
■雇用保険・社会保険■
雇用保険の資格取得には、 “31日以上勤務見込み”“週20労働時間以上”の要件があり、一般的には、主として生計を維持する賃金を受ける使用者が資格取得することになります。 2つの勤務先で同時に資格取得することは、できません。社会保険の資格取得要件は、労働時間が“正社員の概ね4分の3”以上ですが、ケースによっては、
それぞれの事業所からの報酬に応じた保険料が発生する可能性があります。