労働保険は企業単位ではなく、支店や営業所等(以下、「支店」という)の事業所を1つの単位として、適用することが原則となっています。そのため、新たに支店を開設するときには、本社とは別に新規で届け出を行い、支店で労働保険料の申告や納付を行うこととなります。

しかし、このように各々の事業所で手続きを行うことは事務処理が煩雑になることから、本社と支店など、2つ以上の事業所の労働保険料の申告や納付の処理を本社にまとめる「継続事業の一括」と呼ばれる手続きがあります。この手続きは、一定の要件を満たす事業所が申請することで、認可を受けることができるものですので、以下でその要件と手続きについてまとめておきます。

継続一括の要件
継続事業の一括を申請する場合には、本社と支店など一括を受けようとする事業について、以下のすべての要件を満たしていなければなりません。

①継続事業であること
②それぞれの事業の保険関係が以下のいずれかであること
a.一括を受けようとする事業のすべてが労災保険のみ成立している
b.一括を受けようとする事業のすべてが雇用保険のみ成立している
c.一括を受けようとする事業のすべてが労災保険と雇用保険の両方が成立している
③労災保険率表による事業の種類が同じであること
④事業主が同一であること
⑤一括して申告・納付する事業所が、全体の労働者数や支払われる賃金を把握していること

支店の処理を本社で一括して行う際の手続
支店を開設するときには、まず「労働保険 保険関係成立届」を支店を管轄する労働基準監督署へ提出する必要があります。その上で、「労働保険 継続事業一括認可申請書」を本社の所在地を管轄する労働基準監督署を経由して都道府県労働局へ提出します。申請が認可されることで、労働保険料の申告および納付を本社で行うことができます。

継続一括を行った際の留意点
継続事業の一括を行った場合には、労働保険料の申告および納付は一括して行うことができますが、支店の従業員が労災事故に遭った場合には、支店を管轄する労働基準監督署で保険給付等の手続きを行うことになります。本社を管轄する労働基準監督署へ提出するようなケースが多くあるようですので、誤りのないように手続きをしましょう。

そもそも労働保険が事業所単位での適用であること自体の認識がなく、支店を開設した場合でも手続きが行われていないケースもあるようです。労働保険料の納付および申告にはこのような便利に扱うことのできる継続事業の一括制度が用意されているため、この制度を利用することも含め、手続きの漏れのないようにしましょう。